NIKKOR Z DX 24mm f/1.7 レビュー|35mm相当の広角ポートレート

菜の花畑に座るモデルのポートレートとNIKKOR Z DX 24mm f/1.7レンズの製品画像、Z50IIでの広角ポートレート解説アイキャッチ カメラ

NIKKOR Z DX 24mm f/1.7は、35mm判換算で35mm相当の画角を持つ広角単焦点レンズです。

ここで、「レンズには24mmと書いてあるのに、なぜ35mm相当なのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。その理由は、今回使用したカメラ「Nikon Z50II」に搭載されているAPS-Cサイズのセンサーにあります。フルサイズ機に比べてセンサーサイズが小さいため、レンズに表記された焦点距離の「約1.5倍」の画角(24mm × 1.5 = 35mm相当)として写るのがこのシステムの仕様です。

一般的にポートレートでは、35mm、50mm、85mmが「黄金の焦点距離」とされています。しかし、背景を整理しやすい50mmや85mmの望遠域に比べ、広角寄りの35mm(相当)は扱いが難しい側面もあります。望遠特有の圧縮効果が得られない分、被写体だけでなく「周囲の環境」までが克明に写り込むためです。

木目調のテーブルの上に置かれた、ニコンの単焦点レンズ「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」。横にはレンズキャップが置かれている。

一方で、この「広さ」こそが35mmの最大の武器となります。撮影場所のシチュエーションを重視する場合や、今回の菜の花畑における「座りでの煽り構図」など、パースペクティブ(遠近感)を強調したい場面でこそ、その真価を発揮します。

手に持ったZ50iiと24mm F1.7レンズ

レンズ寸法 約70mm(最大径)×40mm 約135g

NIKKOR Z DX 24mm f/1.7を手に取って驚くのは、その圧倒的な軽さとコンパクトさです。Z50IIに装着した状態でも、手のひらにすっぽりと収まってしまう。

これは、旅行や日常の気楽な撮影において「カメラを持ち出すハードル」を極限まで下げてくれること。重厚な機材を構える緊張感と、カメラを取り出す億劫さから解放されます。この「心の余裕」こそが、撮影者とモデルの距離を縮め、より自然な表情を引き出すための最高の投資となります。

大きなレンズでは威圧感を与えてしまうようなカフェの店内や、人混みの中でのスナップ。そんな場面でも、このサイズ感なら周囲に溶け込み、日常の何気ない瞬間を「資産」として残すことができる。「重いから今日は持っていかなくていいか」という機会損失をゼロにする。 このシステムが持つ真の価値は、てのひらの中に凝縮されているのです。

本記事では、Z50IIとの組み合わせによる実写データを通じ、この広角レンズがポートレートにどのような効果をもたらすのかを検証します。

撮影協力

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比較表:35mm(広角)と 85mm(中望遠)

ポートレートにおける両者の特性を比較

レンズ画角の違いを比較したイラスト。35mm相当(広角)と85mm相当(中望遠)の特性、主役の比率、撮影スタイル、適正シーンが表形式でまとめられている。

1. 「日常」を切り取るか、「非日常」を創るか

35mm(相当)は、人間の自然な視野に近い画角です。そのため、写真に「作為的な意図」が入りすぎず、ドキュメンタリーのようなリアリティが生まれます。対して85mmは、肉眼では不可能な「背景の圧縮とボケ」を強制的に作り出すため、一瞬で目を引くドラマチックな世界観(非日常)を構築するのに適しています。

2. 「5:5の比率」がもたらす情報の整理

35mmでの撮影において、背景は「映りこんでしまうもの」ではありません。人物と同じ比重を持つ「どこで、誰とどうすごしたかを写す背景」です。どんな空気の中で撮ったのかという「文脈」を重視したい旅行やスナップでは、35mmが最適です。逆に、モデルの微細な表情の変化や、その場のノイズを一切排除したいストイックなポートレートでは、85mmの「主題を孤立させる力」が圧倒的なメリットをもたらします。

3. コミュニケーションの解像度

35mmは、手を伸ばせば届く距離で会話をしながら撮影できるため、モデルの「素」の表情を引き出しやすいのが特徴です。一方、85mmは一定の距離を保つ必要があるため、撮影者は「観察者」としての立ち位置が強まり、狙い澄ました一瞬を切り取る集中力が求められます。

35mmという「距離」が教えてくれたもの

実は、私自身も35mm(相当)という焦点距離には、長く苦手意識を抱いていました。

ポートレートにおいて、35mmは「人物だけに集中すれば良い」わけではないからです。85mmのような中望遠レンズが背景を整理し、被写体を主役として孤立させる「非日常の切り取り」であるのに対し、35mmは「人物:背景=5:5」の比率で世界を切り取ります。意識の外にある背景までが克明にフレームへ入り込む。この情報の多さが、表現としての難易度を高くさせている要因だと感じていました。

「フローラルプラザ」の看板の横に立ち、両手を広げてポーズをとる女性。背景には洋風の建物が見える。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

しかし、今回ぬぬさんをこのレンズで追う中で、その「難しさ」は「親密さ」の裏返しであることに気づかされました。

85mmでは切り捨てられてしまう「その場の光、空気、季節の匂い」。それらを35mmは余さず記録します。物理的な距離がぐっと縮まることで、撮影者である私と、モデルである ぬぬさんの間に、良い意味での「緩さ」が生まれます。

「フローラルプラザ」の看板の前でしゃがみ、両手でピースサインを作る笑顔のぬぬさん。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100
「フローラルプラザ」の看板の前でしゃがみ、斜め上を向いて両手を差し出すポーズをとる女性。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

それは、作品をストイックに追い込む緊張感ではなく、まるで一緒に旅をしているようなリラックスした感覚。話し中のふとした瞬間にこぼれる笑顔や、力みのない自然な視線。この「日常の延長線上にある美しさ」を引き出せたのは、35mmという距離感があったからこそです。

35mmでの撮影は、単なる記録ではなく、その場の「旅行気分」を共有するプロセス。仕上がった写真を見返すと、菜の花の香りと共に、ぬぬさんと過ごした穏やかな時間が鮮明に蘇ります。

85mmで顔のアップになってしまう距離感でも、24mm f/1.7(35mm相当)なら、モデルを菜の花の海に沈めたような、包容力のある構図が完成します。

菜の花畑における「引き」の構図

焦点距離: 56mm SS: 0.000500s (1/2000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.4 ISO感度: 100

菜の花畑での撮影において、85mmの圧縮効果は非常に魅力的です。立ったシーンであれば花と人物をクローズアップし、印象的な一枚を仕上げるには最適です。

アニメ調のイラスト。菜の花畑の中で座る女性を、少し離れた位置から一眼レフカメラで撮影している男性の背後からのカット。

しかし、「広大な菜の花に囲まれている」というシチュエーションそのものを表現したい場合、85mmでは画角が狭すぎます。そこで今回は、モデルに座ってもらい、35mm(相当)の広角を活かして周囲の情景を取り込む手法を採りました。

菜の花に囲まれて座り、目を閉じて顔に手を添える女性のクローズアップ。手前の菜の花が柔らかくボケている。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100
菜の花に囲まれて座り、目を閉じて顔に手を添える女性のクローズアップ。手前の菜の花が柔らかくボケている。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

ポートレートにおいて、85mmから35mmへとレンズを広角側に振っていくことは、単に「写る範囲が広がる」以上の意味を持ちます。それは、撮影の主眼を「人物のクローズアップ」から「その人が存在する世界の物語」へと、組み替えていくプロセスです。

ここでは、同じ「座りポーズ」を維持したまま、画角だけを段階的に広げていくことで、背景の情報量がいかに増幅され、写真の持つ空気感がどう変化するかをシミュレートしました。

画像をタップ(クリック)して、85mmから35mmへと「引いていく」感覚を体験してみてください。

画角比較:85mm(相当)
85mm(相当) タップで広角へ切り替え

いかがでしょうか。 85mmのクローズアップから、段階的に画角を広げていくと、35mm(相当)に切り替わった瞬間に「菜の花の海」が画面いっぱいに広がるのがわかります

85mmでは近すぎて顔のクローズアップになってしまう距離感でも、35mmなら「モデルを菜の花が包み込むような、包容力のある構図」が完成します。ここで重要なのは、モデルに「座ってもらう」こと。高さを抑えることで、広角特有のパース(遠近感)が強調され、菜の花に包まれた物語へと変わるのです。

「35mmは難しい」と感じる場面こそ、敢えて使ってみる。 それだけで、このレンズは写真を菜の花に包まれた世界に変える構図になります。

横構図から縦の中望遠ポートレートへ切り出す運用

NIKKOR Z DX 24mm f/1.7(35mm判換算35mm相当)には、単一の画角を超えた、合理的な「運用方法」が隠されています。

まずは、こちらの写真をご覧ください。

多肉植物のグリーンと、メルヘンな小さな家に囲まれ、ぬぬさんの表情が際立つ人物重視の「縦のポートレート構図」です。余計な背景情報が整理され、視線が自然とモデルへ向かうこの一枚。

焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

実はこれ、35mmの広角レンズで撮影した「横写真」から、ぬぬさんを中心に2:3の比率で縦位置に切り出したものです。ここで注目すべきは、画角の変化です。35mmの広角から、短辺(高さ)を活かして縦にクロップすることで、計算上は「約54mm相当」の画角へと変貌します。

これはポートレートの王道とされる「50mm標準レンズ」とほぼ同等のパース(遠近感)。この一枚の写真からもう一つの焦点距離「標準レンズ」も引き出すことができるのです。

これが「元写真」となった、トリミング前の横写真です。

焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

この写真は、35mm(相当)という画角の特性を、環境と人物の「5:5の比率」で可視化しています。手前の多肉植物のグリーンと、メルヘンな小さな家から、ぬぬさん自身、そして後景に広がる緑地と空まで。これらすべての要素が、同一フレーム内で対等な背景として存在しています。

35mm(相当)という「広角資産」を持っておけば、後からこのように「標準レンズ」としての価値を自由に引き出すことができる逆に54mm相当から→35mmの画角にあとから変更することは物理的に不可能です

この運用方法における注意点

「広角から望遠へのコンバージョン」は強力な運用ですが、万能ではありません。実運用にあたっては、以下の2つの技術的制約を認識しておく必要があります。

  1. 画素数の減少 トリミングは画像の一部を「捨てる」プロセスです。横写真から縦に切り出すと、画素数は単純計算で約4分の1(Z50IIなら約500万画素程度)まで減少します。SNSやブログ表示には十分ですが、大判プリントや4K全画面表示では画質の粗さが顕在化するリスクがあります。
  2. ボケ量(被写界深度)の限界 トリミングで変えられるのは「画角(写る範囲)」のみです。実際の85mmレンズが持つ「強力な圧縮効果」や「とろけるような大きなボケ」までは再現できません。主題を完全に背景から孤立させたい場合は、中望遠レンズの使用をお勧めします。

「対話」が出来る35mmという近い距離感

多肉植物のグリーンと、メルヘンな小さな家に囲まれ、遊ぶぬぬさん。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

NIKKOR Z DX 24mm f/1.7(35mm判換算35mm相当)がもたらす最大の恩恵は、被写体との「物理的な近さ」が生み出す心理的な効果です。

多肉植物のグリーンと、メルヘンな小さな家に囲まれ、遊ぶぬぬさん。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

85mmのような中望遠レンズでは、モデルとの間に一定の距離が必要となり、撮影者は「観察者」としての立ち位置が強くなります。しかし、35mmは、手を伸ばせば届く、まさに「一緒に遊んでいる」最中の至近距離でシャッターを切ることができます。この距離感は、モデルの緊張を解き、カメラの存在を忘れさせた「素の表情」を引き出すために極めて有効なレンズとなります。

多肉植物のグリーンと、メルヘンな小さな家に囲まれ、遊ぶぬぬさん。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100
多肉植物のグリーンと、メルヘンな小さな家に囲まれ、遊ぶぬぬさん。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

本来、広角レンズはボケにくい特性を持ちますが、ここまで被写体に接近し、背景(遠景)との距離を確保することで、f/1.7の浅い被写界深度が際立ちます。ぬぬさんの楽しげな表情と、カメラへ差し出された右手にピントを合わせつつ、周囲の菜の花を黄色いシロップのように柔らかく溶かしていく。

多肉植物のグリーンと、メルヘンな小さな家に囲まれ、遊ぶぬぬさん。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

この描写により、広角特有の「情報の多さ」を適度に整理し、親密なコミュニケーションの「空気感」だけを純度高く切り取ることが可能になります。35mmという焦点距離は、ただ広く写すためだけでなく、被写体との関係性を深め、写真の価値へ反映させるための、最良のツールだと言えます。

ユキヤナギの白に包まれる「立ち」と「座り」の価値

NIKKOR Z DX 24mm f/1.7(35mm判換算35mm相当)は、その適度な広角画角によって、被写体の「全身」と周囲の「環境情報」を高い解像度で両立させます。

ここでは、繊細な白い花が連なる「ユキヤナギ(雪柳)」を背景に、立ちポーズと座りポーズの2段構えで、このレンズの汎用性を検証しました。

花に囲まれて座り、目を閉じて顔に手を添えるぬぬさん。手前の菜の花が柔らかくボケている。
焦点距離: 24mm SS: 0.002s (1/500) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

35mm(相当)の広角を活かして、ぬぬさんの全身と、降り注ぐ雪のように咲き誇るユキヤナギの広がりを一枚のフレームに収めました。これにより「その場がいかに春の光と花で満ち溢れていたか」という環境情報を瞬時に理解できます。

花に囲まれて座り、目を閉じて顔に手を添えるぬぬさんのクローズアップ。手前の菜の花が柔らかくボケている。
焦点距離: 24mm SS: 0.002s (1/500) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

同じ場所で、ぬぬさんに座ってもらった構図です。実はこの座りポーズ、撮影現場でぬぬさん本人が提案してくれたもの。

満開の花を前景に配置し、その奥で佇むぬぬさんを捉えた、奥行きのあるポートレート。
焦点距離: 24mm SS: 0.002s (1/500) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

ぬぬさんの提案通り視点を下げることで、しなやかな枝のラインがぬぬさんを優しく包み込むような、親密な空間が生まれました。35mmという画角は、こうした低い位置にある被写体とも自然に調和し、立ちポーズとは全く異なる、穏やかで日常の延長線上にある物語性を描き出します。

まとめ|35mmを使いこなせれば、最強の万能レンズ

ツバキを背に、ぬぬさんの後ろ姿をシルエットで捉えたドラマチックな一枚。
焦点距離: 24mm SS: 0.001s (1/1000) 露出補正: -0.33 eV F値: f/1.7 ISO感度: 100

今回の検証を通じて、私自身が抱いていた35mm(相当)への苦手意識は、確信へと変わりました。

ポートレートにおいて85mmのような中望遠レンズが「一瞬の非日常」を切り出すスペシャリストだとするならば、このNIKKOR Z DX 24mm f/1.7は、その場の空気感やモデルとの親密な距離感までも蓄積する、極めて汎用性の高い「ストック型資産」と言えます。

苦手な人こそ、この「近さ」を味方につけてほしい

「人物だけに集中したいから広角は難しい」と考えていた過去の自分に伝えたいのは、「35mm(相当)は、被写体を孤立させるのではなく、被写体が生きている世界を丸ごと愛でるためのレンズだ」ということです。Z50IIとの組み合わせによる驚異的なコンパクトさと、f/1.7がもたらすボケの恩恵。このシステムは、あなたのポートレート撮影を「ただの記録」から「温度感のある記憶」へと昇華させてくれるはずです。

もしあなたが、次に投資する一本に迷っているなら。 この小さなレンズがもたらす「圧倒的なコミュニケーションの解像度」を、ぜひ一度体験してみてください。

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