SARB021で外装の重要性を痛感した私が、次なるステップとして足を踏み入れたのは、国産時計の聖域「グランドセイコー」でした。
選んだのは、機械式ではなくクオーツモデルの「SBGX061」。かつては「手間のかかる機械式こそが至高」と考えていた私ですが、GSのクオーツを知ることで、その価値観は大きな転換期を迎えることになります。
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辿り着いた、国産時計の実用時計最高峰

無駄を削ぎ落とした究極の普通。しかし、放つオーラは別格です。
エンジニアの心を揺さぶる「9Fクオーツ」の内部
『究極の普通』と称されるGSの、静止画では捉えきれない細部の質感撮影しました。
一般的にクオーツといえば、安価で大量生産のイメージがあるかもしれません。しかし、GSの「9F62」ムーブメントは全くの別物です。
年差±10秒という圧倒的な精度はもちろんですが、私が最も惹かれたのはその内部構造です。通常、時計の裏蓋を開けてもクオーツは味気ないものが多いのですが、GSは違います。美しく仕上げられたゴールドの地板、そしてクオーツでありながら保油性を高めるための「保油ダイヤ」の採用。
この、見えない部分にまで徹底的にこだわる姿勢は、私が普段現場で品質を追求するエンジニアの精神と深く共鳴するものがありました。

クオーツの概念を覆す、工芸品のような9F62ムーブメント。
重厚な針を動かす「ツインパルス制御モーター」
秒針が2段階で動く様子をスーパースローで撮影しました。
GSのアイデンティティの一つに、太くて力強い針があります。 本来、トルクの弱いクオーツでこれほど重い針を回すのは困難ですが、GSは「ツインパルス制御モーター」という独自の技術でこれを解決しています。
1秒間に2回信号を送ることで、クオーツの限界を超えた重厚な針を堂々と動かす。文字盤を横切るその太い針と、威圧感のあるインデックスがもたらす視認性は、瞬時に正確な時間を読み取るという「道具としての効率」を極限まで高めています。

圧倒的な視認性を誇る、重厚な針と多面的にカットされたインデックス。
職人の手仕事「ザラツ研磨」の輝き
ケースに目を向けると、そこには「ザラツ研磨」と呼ばれる熟練の職人技が光っています。歪みのない鏡面仕上げは、まるで鏡のように周囲の景色を映し出します。
SARB021でも十分に美しいと感じていましたが、GSのそれは次元が違いました。光と影のコントラストがより明確になり、腕を動かすたびに「本物の道具」を所有している満足感が込み上げます。

歪み一つない鏡面仕上げ。職人の執念がこのケースに宿っています。

左がSARB021、右がSBGX061。似て非なる、圧倒的な質感の差。
結び:精度と質感の、一つの到達点
SBGX061を手にしたことで、「狂わない、止まらない、そして美しい」という、時計における一つの完成形を体験しました。時刻合わせという手間から解放されつつ、GSという最高峰の質感を日常的に享受できる。これは私にとって、非常にコストパフォーマンスの高い選択でした。

袖口から覗くGS。派手さはありませんが、確かな「本物」がそこにあります。
しかし、人間の探究心というものは恐ろしいものです。この「精度」の深みを知った私は、さらにその先にある「ケース精度」という未知の世界へ興味を抱くようになります。
次回、【ザ・シチズン編:さらなるケース精度の高み】。極限の世界へ、歩みを進めます。




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