前回、グランドセイコーの9Fクオーツで「究極の普通」を体験した私ですが、エンジニアとしての探究心は止まりませんでした。次なる目的地として選んだのは、シチズンの最高峰「ザ・シチズン(THE CITIZEN)」、それも絶滅危惧種とも言える「機械式」モデル NA0000-59Eでした。

この佇まいGSしか知らない人に見せると驚かれます。また「ガラスが付いてない・・?」と錯覚させる無反射コーティング技術に脱帽です。
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クオーツの聖域を経て、再び「機械の鼓動」へ
10.9mmという薄さの中に凝縮された、シチズン渾身の機械式ムーブメントの鼓動を記録しました。写真ではわかりにくい『工業精度の究極』を映像で確認してみてください。
多くの人が「シチズン=エコ・ドライブ(ソーラー)」というイメージを持つ中で、あえて機械式を選択する。そこには、数値スペックだけでは語れない圧倒的な「精度」が隠されていました。

鏡面とサテンの対比が美しい、ザ・シチズンの旗艦モデル。
驚異の「10.9mm」がもたらす、腕へのストレスフリー

まず特筆すべきは、その「薄さ」です。 自動巻きの機械式時計でありながら、厚さはわずか10.9mm。これは一般的なクオーツ時計と遜色ないレベルです。
重さは121g。重すぎず、軽すぎないこの絶妙なバランスと薄さが、日本人の細い腕に吸い付くような装着感をもたらします。長時間のデスクワークや現場での指揮においても、時計の重みや厚みが「ストレス」にならない。これは実用時計として、極めて高いコストパフォーマンスと言えます。


自動巻きとは思えない薄いケース。このサイズであれば袖口への収まりも完璧です。腕に乗せた時の重心の低さが、疲労軽減に直結します。
日本刀のように鋭い「鏡面仕上げ」の針
文字盤に目を向けると、そこにはGSをも凌駕するほどの「執念」が宿っています。 特に、この日本刀のように鋭く磨き上げられた時分針。僅かな光を捉えて輝くこの針を見ているだけで、エンジニアとしての感性が刺激されます。
多面的にカットされたインデックスも、単なる装飾ではありません。どんな角度からも瞬時に時刻をデバッグできる「視認性の高さ」を実現するための、計算し尽くされた造形です。

中心から放射状に広がる仕上げと、鋭い針の対比。インデックスの立ち上がりの美しさに、シチズンの意地を感じます。
GS SBGX061との比較で見えた「精度の先にあるもの」

左がGS、右がザ・シチズン。似て非なる、二つの最高峰。
GSのSBGX061と並べてみると、私がなぜGSを所有しながらもザ・シチズンに魅了されたのかが明確になります。GSが「引き算の美学」なら、ザ・シチズンは「技術の集積」です。例えばGSは簡単に剥げる無反射コーティングを辞めましたが、ザシチズンは自社の剥げにくいコーティング技術を活用し、無反射コーティングを施す事で、光を反射する事なく文字盤の黒が際立っています。また細部を詳細に観察すると、仕上げの細かさ、そして全体のバランスにおいて、ザ・シチズンが勝っている部分が多々見受けられます。それは、ブランドの名声に甘んじることなく、後発として機械式市場に挑むシチズンの「レア度」に裏打ちされた情熱の現れかもしれません。

ブレスレットのコマ一つ一つの仕上げにも、一切の手抜きがありません。
10年保証という「一生モノ」への確信
シチズンが提供する、10年保証と2回の無償定期点検(オーバーホール含む)。 このアフターサービスの充実ぶりは、まさに「一生使う」というユーザーの決意に応えるものです。高い買い物でしたが、この安心感を含めた実利を考えれば、結果的に最も賢い投資だったと感じています。

コート・ド・ジュネーブ仕上げが施された、シチズン自慢の心臓部。本物だけが持つ存在感は、見るたびに高揚感を与えてくれます。
究極の工業製品の果てに見つけた「正解」

何度も時計屋へ足を運び、実物を腕に乗せてようやく確信したこの1本。機械式という趣味性と、ザ・シチズンという圧倒的な実用性が高次元で融合したこの時計は、私の腕時計遍歴において非常に重要なマイルストーンとなりました。
しかし、この「高精度への執念」を体験したことで、私の興味はついに「番外編」へと向かうことになります。最後に使用経過2年後の動画を記録に残しているので、デュラテクトの傷の付きにくさも必見ですので参考にしてください。
次回、【GS愛は冷めない:GrandSeiko SBGR053】。お楽しみに。




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