今回は、ずっと気になっていたHondaの最新ミドルスポーツ「CB750 HORNET」を、満を持してレンタルしてきました。
現在、私の愛車は2023年式のCBR250RRです。フロントにイニシャルアジャスターを入れ、リヤにはオーリンズを装着し、純正特有の前後バランスのチグハグさを、走れるレベルまで補正してきました。

しかし、どれだけパーツを追加しても、250cc並列2気筒180度クランク燃焼特有の物理的な限界だけは超えられませんでした。それが、バイパスや高速道路を巡航する際に発生する「高周波振動」です。
100km/h巡航ともなればエンジンは常に高回転を維持せざるを得ず、そこから発生する微振動がダイレクトに手に伝わってきます。バーエンドをヘビーウェイトに変え、パフォーマンスダンパーを追加するという、考えられる限りの対策を尽くしてもなお消えないしぶとさ。サービスエリアに滑り込む頃には、手がジーンと痺れてしまい、高速移動は肉体的にもかなりのストレスを感じていました。
これこそが、私が「もっと日常の移動にゆとりがあり、ストレスのない次期バイク」を真剣に考え始めた最大の理由です。
そんな私の視野に、突如として飛び込んできたのがこの新型HORNET 750でした。

| CB750 HORNET E-Clutch 主要諸元 | |
|---|---|
| 車名・型式 | ホンダ・8BL-RH24 |
| 全長×全幅×全高(mm) | 2,090 × 780 × 1,085 |
| シート高(mm) | 795 |
| 車両重量(kg) | 196 |
| 定地燃費値 (km/L) | 34.5(60km/h)〈2名乗車時〉 |
| WMTCモード値 (km/L) | 22.7(クラス 3-2)〈1名乗車時〉 |
| エンジン種類 | 水冷4ストロークOHC(ユニカム)4バルブ直列2気筒 |
| 総排気量(cm³) | 754 |
| 最高出力 | 67 kW [91 PS] / 9,500 rpm |
| 最大トルク | 75 N·m [7.6 kgf·m] / 7,250 rpm |
| 燃料タンク容量(L) | 15 |
- 概念を覆す塊感|750ccのストリートファイター
- 一昔前の400ccクラスを下回るスリムな二面性
- HORNET750|主要モニタ設定画面
- メーター表示のバリエーションについて
- シチュエーションに完全対応|走行モードを自由に変えられる電子制御
- 日本の道路事情にマッチする、絶妙なコンパクトさのハンドル周り
- 電装系のコアに迫る|TFTメーターからLED灯火類までのデジタルガジェット感
- 外装の造形美を解剖する|ストリートファイターとしての強いアイデンティティ
- 走りの本質を突く足回り|コーナリング性能を追求したHONDAの思想
- 心臓部に迫る|SOHCの概念を覆すレスポンスとトルク
- ライバル比較|ライディングポジションから読み解くメカニズムとメーカーの思想
- 海外メディアも大絶賛 | ミドルネイキッド3台比較でHORNETが勝者に選ばれた理由
- 総評|数々の大型マシンを借りてきた私がやっと巡り合えた「理想の一台」
概念を覆す塊感|750ccのストリートファイター
左右の真横からこの車体をじっくりと眺めてみて、最初に確信したことがあります。

低く構えたシャープなヘッドライトから、ボリュームのある燃料タンク、そして跳ね上がったテールへと流れるエッジの効いたシルエットは、完全に戦闘的なストリートファイターそのものです。
そして何より驚かされるのが、真横から見たときの圧倒的なコンパクトさです。

マシンの中心にエンジンや機能パーツがギュッと凝縮された塊感があり、事前に「750ccの大型バイクである」という予備知識がなければ、とてもこれほどの排気量があるマシンのようには見えません。大型バイクにありがちな、どっしりとした重苦しさや前後の間伸び感が一切なく、ホイールベースも含めて非常にスマートかつアグレッシブにまとめ上げられています。
一昔前の400ccクラスを下回るスリムな二面性
視点を前後へと移すと、このマシンの持つ「スリムさ」というもう一つの二面性が浮き彫りになります。

正面から対面すると、鋭いLEDヘッドライトとエッジの効いたシュラウドがストリートファイターらしい攻撃的な表情を主張していますが、全体の横幅は非常にタイト。さらに真後ろに回ると、無駄な贅肉を極限まで削ぎ落としたスタイリッシュな佇まいをしています。

この前後左右どこから見ても隙のない凝縮感は、「一昔前の400ccネイキッド(CB400SFなど)と同等か、あるいはそれよりもシャープで引き締まっているのではないか?」と本気で思わせるレベルです。現行の250ccクラスと並べても、そこまで大柄には見えない可能性すらあります。
この「前後左右どこから見ても排気量を感じさせない凝縮感」こそが、ストリートでの扱いやすさや、取り回しにおける圧倒的なストレスのなさに直結しているのは間違いありません。
HORNET750|主要モニタ設定画面
CB750 HORNETのメーター内にある設定メニューは、大きく4つのカテゴリーに分かれています。
1.機能メニュー

マシンの走行特性や制御に関する、最も重要な電子制御のコアが集まるセクションです。
- ライドモード: エンジンの出力特性や各種制御レベルの統合プロファイルを管理します。
- シフトポイント: メーター上のシフトアップインジケーターが点滅する回転数を任意に調整可能です。
- セルフキャンセルウインカー: 旋回後に自動でウインカーを消灯させるかどうかのON/OFFを設定します。
- トリップA自動リセット: 給油タイミングなどの条件に応じてトリップAを自動クリアする設定です。
- HISS: Honda独自の盗難抑止イモビライザーシステムの作動表示灯に関する管理を行います。
2.ディスプレイメニュー

ライダーの視覚に直結する、メーターグラフィックのカスタマイズを行います。
- ディスプレイタイプ: メーターのデザインやタコメーターの表示パターンを切り替えます。
- 明るさ / 背景: 画面の輝度や、昼間・夜間モードに対応する背景色の切り替え(白/黒など)を調整します。
- お気に入りの情報 / お気に入りボタン: 画面内に常時表示させておきたい項目や、手元のスイッチへ割り当てるショートカット機能をカスタムします。
- 外気温計: 走行中の環境変化を察知するための外気温表示のON/OFFを管理します。
3.全般メニュー

デバイスとしての基礎的なシステム環境をセットアップする項目です。
- 日時 / 言語: 時計の時刻合わせや、メーター内の表示言語を選択します。
- デフォルト設定を復元: カスタムしたメーター周りのセッティングを出荷時の状態へリセットします。
- BLUETOOTHペアリングをリセット: スマホやインカムとの無線接続履歴を消去し、通信周りの再構築を行う際に使用します。
4.サービスメニュー

マシンの健康状態の把握や、車両固有の管理情報にアクセスするセクションです。
- メンテナンス: 次回のオイル交換時期や定期点検までの距離・日数を管理・確認できます。
- 装備: オプション設定されているパーツ等の連動管理を行います。
- システム情報: 車両のファームウェアバージョンなどを確認する、まさにガジェットのステータス画面的な役割です。
メーター表示のバリエーションについて
CB750 HORNETの5インチTFTフルカラー液晶メーターには、ライダーの好みやシチュエーションに合わせて選べる3種類の表示パターンが用意されています。
アナログモード|馴染み深い円形タコメーターデザイン

最もオーソドックスで、直感的に回転数を把握しやすいのがこの「アナログモード」です。
画面左側に大きな円形のタコメーターが配置され、中央にデジタル速度計が居座る、スポーツバイクでは定番のレイアウト。針の動きでエンジン回転数の盛り上がりが感覚的に捉えやすいため、峠道でのスポーツライディングや、これまでのアナログメーターに慣れ親しんだ方に最もおすすめの画面構成です。
デジタルモード|近未来的でレーシーなバーグラフデザイン

液晶上部をなぞるように、左から右へ向かってアーチ状に回転数が伸びていく「デジタルモード」です。
一目で最新の電子制御マシンに乗っていることを意識させてくれる、ガジェット感の強いレーシーなデザインが特徴です。タコメーターの主張が適度に抑えられ、中央のスピード表示がより引き立つレイアウトのため、情報をスマートに視認したい時に活躍します。
シンプルモード|視覚的なノイズを極限まで削ぎ落とした構成

タコメーターそのものを画面から完全に排除し、必要最低限の情報だけに特化した「シンプルモード」です。
大きく中央に表示される「速度(km/h)」と、ギヤポジション、燃料計、時計といった基礎ステータスのみがフラットに配置されます。「長距離の高速道路巡航で、タコメーターの動きによる視覚的な疲れ(ストレス)を減らしたい」というシチュエーションや、ゆったり流して走りたい時にはこれがベストな選択肢になります。
シチュエーションに完全対応|走行モードを自由に変えられる電子制御
CB750 HORNETには、エンジンの出力特性や各種制御レベルを統合して切り替えられる「ライディングモード」が搭載されています。
今回の実走検証で確認しましたが、これらのモードは走行中であっても手元のスイッチひとつでリアルタイムに切り替えが可能です。ツーリング中にとっさの雨に見舞われた際や、高速道路からワインディングへとステージが変わった瞬間でも、バイクを止めることなく安全かつスマートに対応できるのは大きなメリットです。
具体的に用意されている4つの走行モードについて、メーター画面と一緒に見ていきましょう。
1.STANDARD(スタンダード)

街乗りから小気味いいツーリングまで、最も幅広いシチュエーションをカバーする基本のモードです。
扱いやすさを最優先したフラットなトルク特性になっており、日常域でのストレスのない走りをサポートしてくれます。普段使いやのんびり下道を流すときは、基本的にこのモードを選択しておけば間違いありません。
2.SPORT(スポーツ)

HORNETが持つ91馬力のポテンシャルをフルに解き放つ、最もエキサイティングなモードです。
アクセル開度に対するエンジンのレスポンスが牙を剥いたように鋭くなり、高回転まで一気に吹け上がる加速の暴力を堪能できます。ワインディングの立ち上がりやサーキット走行など、マシンのパフォーマンスを限界まで引き出して熱く走りたいときに真価を発揮します。
3.RAIN(レイン)

路面が濡れているウェットコンディションや、滑りやすい状況下での安全性を最優先したモードです。
エンジンの出力特性が最もマイルド(牙を抜いた状態)に抑えられ、同時にトラクションコントロールなどの介入度が最大になります。ツーリング中の急な天候変化で雨が降り出したときも、走行中にこのモードへパッと切り替えるだけで、スリップのリスクを最小限に抑えて高い安心感を確保できます。
4.USER(ユーザー)

ライダーの好みやステージに合わせて、各種電子制御のパラメーターを個別にカスタムできる自由度の高いモードです。
「パワー特性は最高レベルにしたいけれど、安全のためにトラクションコントロールの介入は残しておきたい」といった、純正のプリセットモードでは手が届かないニッチな要望を形にできます。
このモードの真骨頂は、さらに深い階層下に潜ることで、マシンのキャラクターを決定づける以下の3つの電脳パーツ(パラメーター)を細かくセッティングできる点にあります。
画面を見ると、ユーザー設定は「1」と「2」の2種類のプロファイルを保存できるようになっており、それぞれに対して独立した数値を割り当てることが可能です

- P(パワーセレクター) アクセルを開けたときのエンジンの出力特性(レスポンスの鋭さ)を調整します。キビキビ走りたいときは高めに、マイルドに流したいときは低めに振るなど、好みの出力フィールを作れます。
- EB(セレクタブルエンジンブレーキ) アクセルを戻したときのエンジンブレーキの効き具合をコントロールします。サーキットの進入などでカチッとした減速感が欲しいときや、逆にギクシャク感を減らしてスムーズにコーナーへ飛び込みたいときなど、ステージに合わせた調整が可能です。
- T(Honda セレクタブル トルク コントロール) いわゆるトラクションコントロール(後輪のスリップ抑止機能)の介入度合いを設定します。安全マージンをガッツリ残すセッティングから、マシンのポテンシャルをダイレクトに後輪へ伝えるアグレッシブな仕様まで、ライダーのスキルや路面状況に応じてコントロールできます。
プリセットされたモードを選ぶだけでなく、こうして各デバイスの制御レベルをフラットに吟味し、自分好みのパッケージを2パターンも作り込める柔軟性は、まさに現代の最新ストリートファイターならではの大きなメリットですね。
日本の道路事情にマッチする、絶妙なコンパクトさのハンドル周り
大型クラスのストリートファイターというと、海外のトレンドを意識した幅広で大柄なテーパーハンドルを採用しているマシンが少なくありません。しかし、このHORNET 750を乗車位置からフラットに眺めてみると、ハンドル幅は大型のストリートファイターとしては比較的狭い(コンパクトな)部類に収まっています。

この絶妙なサイズ感のおかげで、非常に取り回しやすいのが大きなメリットです。幅広ハンドルにありがちな過度な突っ張り感がないため、リラックスしながらもフロントにしっかりと荷重を乗せていける、扱いやすさを最優先した設計になっています。
直感的な操作を支えるスイッチボックスの配置
左右のスイッチボックスも、最新の電脳デバイスをスムーズにコントロールできるように機能的にまとめられています。

左側のスイッチボックスには、5インチTFTメーターのメニュー階層をサクサクと切り替えるための十字キーや「MODE」ボタンがフラットに集約されています。走行モードのリアルタイムな切り替えも、この手元のキーを使って親指ひとつで直感的に行えるため、ライディング中の視線移動を最小限に抑えられます。

右側はセルスイッチとハザードがシンプルに配置されており、無駄なノイズのないスマートなガジェット感が漂います。ハンドル幅の狭さと、これらの操作性の高いインターフェースが組み合わさることで、日常の街乗りからワインディングまで、マシンの電子制御を完全に手の中で支配しているような心地よい一体感を味わえます。
電装系のコアに迫る|TFTメーターからLED灯火類までのデジタルガジェット感
マシンの先進性を支える電装系の局部ディテールをじっくりとチェックしていきましょう。
視認性に優れた5インチTFT液晶メーター

コクピット中央に鎮座するのは、これまで各種設定メニューでも紹介してきた5インチTFTフルカラー液晶ディスプレイです。高精細なパネルは日差しが強い屋外でも反射が少なく、ライディング中にとっさに速度やギヤポジションを確認したい瞬間でも、ストレスのない高い視認性を誇ります。デジタルガジェットをそのままバイクのインターフェースとして落とし込んだような先進性があり、スピードメーターとしての機能だけでなく、マシンとの一体感を強く味わえるコアデバイスに仕上がっています。
戦闘的な表情を作る完全LEDヘッドライト

HORNET 750の顔つきを決定づけているのが、この鋭く切れ上がった完全LEDヘッドライトです。ネイキッドらしい丸型ではなく、路面を低く睨みつけるようなシャープな異形デザインを採用し、非常に洗練された未来的なストリートファイター像を作り上げています。LEDならではの純白で強い光は、夜間走行時でも前方を鮮明に照らし出す高い実用性を備えており、デザインと安全性の両面で大きなメリットをもたらしてくれます。
※ロービーム点灯時の配光(左右半分片側2灯発光)
※ハイビーム点灯時の配光(全プロジェクターが全点灯)
スマートに自己主張するLEDテールランプ


跳ね上がったテールカウルの先端に埋め込まれているのは、非常にコンパクトにまとめられたLEDテールランプです。車体全体の「塊感」を損なわないよう、無駄な主張を抑えたスタイリッシュな形状をしています。しかし、ひとたびブレーキを握ればLEDらしいレスポンスの早さでパッと鮮烈に発光し、後続車への優れた被視認性を確保。引き締まったリヤ周りの佇まいをより一層引き立てています。
愛車CBR250RRと同一仕様のLEDウインカー

ディテールを細かく観察していて、親近感を覚えるポイントを見つけました。フロントとリヤに装着されているこのスマートなLEDウインカーは、実は私の現在の愛車である2023年式CBR250RRと全く同じパーツが使われています。エッジの効いたクリアレンズと細身の形状は、このストリートファイターの鋭い造形にも違和感なく溶け込んでいます。Hondaのスポーツラインアップとしての血統をフラットに感じさせるディテールです。
外装の造形美を解剖する|ストリートファイターとしての強いアイデンティティ
外装のディテールに迫ります。ただコンパクトなだけでなく、細部を観察すると機能美と遊び心がフラットに融合していることが分かります。
なだらかなラインに映える、誇り高きHORNETロゴ

正面からタンク周辺を見上げたときに広がる、このボリュームがありつつもなだらかに流れる造形ラインは、個人的に非常にお気に入りのポイントです。

その美しいカウル表面にしっくりと馴染むように配置された「HORNET」の立体ロゴが、クラスを超えた上質さを醸し出しています。この絶妙な曲線美とエッジの二面性こそ、現代のストリートファイターらしさを最も強く実感できる部分です。
ラジエターシュラウドに隠された、ホーネットの象徴

最後に見つけたニヤリとする局部ディテールが、ラジエターサイドの樹脂シュラウドにひっそりと刻印された、ホーネット(スズメバチ)の象徴たる「蜂の幾何学マーク」です。一見すると見落としてしまいそうな場所に、あえて同色の素地でさり気なくアイコンを忍ばせる遊び心に、HONDAの開発陣の並々ならぬ愛着と誇りを感じます。
空力と機能美を体現するシートカウルのエアダクト

リヤ周りで目を引くのが、シートカウルに大胆に開けられたこのエアコントロール用のダクト(穴)です。私の愛車であるCBR250RRにも同様に空力を意識した肉抜きダクトが採用されていますが、このHORNET 750にもしっかりとスーパースポーツのDNAが受け継がれているのを感じます。単なる見せかけのデザインではなく、高速度域での風の流れ(ストレス)をコントロールするための機能美がこの局部に凝縮されています。
割り切られた積載性|スーパースポーツ同様にほぼ皆無なシート下スペース
外装のスマートな佇まいと引き換えに、明確な割り切りを感じる局部がこのタンデムシート下です。

かつての一昔前のネイキッドであれば、シート下にレインウェアやちょっとした小物を放り込める実用的な収納スペースが確保されているのが一般的でした。しかし、このHORNET 750は外観をストリートファイターとして極限まで引き締めているため、シート下の仕様は完全にスーパースポーツ(SS)のそれです。

実際に開けてみるとスペースは非常にタイトで、純正のETC2.0車載器と、奥に備え付けられている最低限の車載工具を収めたら、それ以外はもう何も入らないほどギチギチに埋まっています。スマホや財布といった手回り品を滑り込ませる余裕すらほぼありません。
荷物を持ち運ぶ際はシートバッグやリュックの活用が必須となりますが、この潔い割り切り(ミニマルさ)こそが、無駄な贅肉のないあの戦闘的なリヤビューと軽快な走りを生み出すメリットに繋がっているのは間違いありません。
走りの本質を突く足回り|コーナリング性能を追求したHONDAの思想
ここからはCB750 HORNETの「足回り」の局部ディテールを深く掘り下げていきます。このセクションを観察すると、HONDAがコストパフォーマンスを意識しつつも、走りの本質に関わる部分には徹底的にこだわっていることがはっきりと分かります。
割り切りとこだわりが同居するサスペンション構造
サスペンションの調整機構に関しては、明確な割り切りが図られています。

フロントはアジャスターによる調整機能が一切なく、リヤもプリロード調整のみという非常にシンプルな仕様です。しかし、調整機構を省いた一方で、フロントフォークにはSHOWA(ショーワ)製の高性能なSFF-BP(セパレート・ファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン)が惜しみなくおごられている点は高く評価できます。

無駄に複雑な調整機構を設けてコストパフォーマンスを悪化させるよりも、最初から減衰特性に優れた上質な基本骨格を奢る。この割り切りこそが、ストリートでのストレスのないしなやかな路面追従性を生み出しています。

さらに局部を覗き込んで見ると、リヤサスペンションにはHONDA伝統のプロリンクサスペンションがしっかりと採用されていることが確認できます。
アクスルトラベルは130mmが確保されており、このリンク機構が介在することによって、ショック初期の微細な路面の凹凸にはしなやかに、奥で大きな荷重がかかったときには踏ん張るという理想的なレジスタンス(プログレッシブ特性)を発揮してくれます。
ただショックユニットをスイングアームに直付けしてコストを抑えるのではなく、こうした見えない局部にメカニカルなプロリンクを奢ることで、路面追従性を極限まで高めている点は非常に好印象です。
スーパースポーツを意識した大胆なフロントホイールの肉抜き

フロント周りを眺めていて驚かされたのが、極限までスポークが細くデザインされたフロントホイールの肉抜きの多さです。
これは明らかに、スーパースポーツと同様の思想でバネ下重量の軽量化を徹底的に狙ってきた証拠と言えます。ホイールが軽く仕上がっているため、交差点を曲がる瞬間やワインディングの切り返しにおいて、ハンドルが素直に、かつ狙ったラインへピタッと吸い付くようなリニアなハンドリング特性をもたらしてくれます。
見せかけの迫力に流されない、160サイズタイヤという正義


そして、このマシンのキャラクターを最も色濃く表している局部が、「160/60 ZR 17」というリヤタイヤのサイズ選択です。
ライバルのMT-07などが180サイズという太くてどっしりした、いかにも大型バイクらしい迫力を演出しているのに対し、HORNETは750cc・91馬力というハイパワーでありながら、あえてワンサイズ細身の「160サイズ」を採用しています。
ここに、「コーナリングでのパタパタとした軽快な旋回フィールや、狙ったクリッピングポイントを絶対に外さない実利的なコントロール性を最優先する」という、HONDAの頑固なまでの走りへの思想をフラットに感じずにはいられません。
実際に乗ってみると、この細身のタイヤと軽量化されたホイール、そしてSFF-BPの組み合わせが絶妙なバランスで機能しており、コーナリングが本当に楽しいパッケージングに仕上がっていることを実感できます。
心臓部に迫る|SOHCの概念を覆すレスポンスとトルク
足回りの秀逸さに続いて、いよいよこのマシンの最重要セクションであるエンジン(心臓部)の局部ディテールを見ていきましょう。スペック表を眺めるだけでは分からない、現代のメカニズムがもたらす走りの快感がここに詰まっています。
DOHCの必要性を感じさせない超レスポンスと湧き上がるトルク
CB750 HORNETに搭載されているのは、新開発の755cc直列2気筒エンジンです。

このユニットの構造を聞いて「今どき大型スポーツなのにDOHCではなくSOHC(ユニカムバルブトレイン)なのか」と、高回転域の伸びやレスポンスに一抹の不安を覚える方がいるかもしれません。しかし、実際にスロットルを捻ればその心配は一瞬で吹き飛びます。

シリンダーヘッド周りをコンパクトにできるSOHCの強みを活かしつつ、DOHCエンジンと比べても全く遜色のない、むしろそれ以上にシャープで小気味いい超レスポンスを実現しています。
さらに素晴らしいのが、低回転域から「もりもり」と湧き上がる分厚いトルクフィールです。クラッチを繋いだ瞬間から力強く車体を押し出し、どの回転域からアクセルを開けても即座に強烈な加速体制に入ってくれるため、ストリートを走っていて純粋に気持ちが良いと思わせてくれます。250ccクラスのような「回さないと走らない」というストレスから完全に解放される、大型ならではのゆとりとエキサイティングさがフラットに両立されています。
良好なメンテナンス性と、唯一残念なオイル確認の仕様
最後に、日常の維持管理(メンテナンス)に関わる局部もチェックしておきましょう。
今回の検証に際してメンテナンスも完了していますが、オイルフィルターはエキゾーストパイプの隙間からストレートにアクセスできる位置に配置されており、作業性は非常に良好です。DIYで定期的な油脂類交換を行うライダーにとっても、この構造は大きなメリットと言えます。

ただし、一点だけ残念に感じたポイントがあります。それが、エンジンオイルの残量(レベル)確認方法です。現代の多くの大型バイクがクランクケース下の「点検窓」から目視でパッと確認できる仕様になっているのに対し、このHORNET 750は一昔前のような「オイルレベルゲージ(キャップ一体型の棒)を抜いて拭き取って測る」仕様になっています。
日常の運行前点検における手間を考えると、ここは点検窓にしてほしかったというのがオーナー目線での本音ですが、それ以外のエンジンパフォーマンスがあまりにも圧倒的であるため、この程度の割り切りは十分に許容できてしまいますね。
ライバル比較|ライディングポジションから読み解くメカニズムとメーカーの思想
先ほど紹介したスペックやリヤタイヤのサイズ選択に加え、さらにこの2台の決定的な違いが浮き彫りになるのが「ライディングポジション(乗車姿勢)」です。

引用:Honda / ヤマハ 公式サイトを基に作成
ハンドル、シート、ステップの位置関係を重ね合わせた三点グラフを見ると、それぞれのメーカーがこのマシンにどのような走りを期待して設計したのか、その思想がフラットに読み取れます。
前傾スポーツのHORNET、アップライトでツーリング向けのMT-07
グラフを重ね合わせると一目瞭然ですが、2台の乗車姿勢には明確なキャラクターの差が存在します。

引用:Honda / ヤマハ 公式サイトを基に作成
- CB750 HORNET(オレンジ線): MT-07に比べてハンドル位置が低く、かつ前方に配置されているため、乗車姿勢はより前傾気味のスポーツ寄りになります。フロントタイヤにしっかりと荷重を乗せやすく、ワインディングやサーキットで積極的にマシンをコントロールして攻め込んでいく走りに適したパッケージです。
- MT-07(水色線): ハンドルが手前かつ高い位置にあり、ステップ位置もわずかに前方へ寄っているため、体を大きく起こして走れるツーリング向けの快適なポジションです。上体が起きることで長距離移動での肉体的なストレスは少なくなりますが、スポーツライディングにおいてはややフロントの接地感が遠くなる傾向にあります。

この乗車姿勢の違いは、これまでに紹介してきた「馬力」や「タイヤサイズ」といったメカニズムの選択とも完全にリンクしています。
ヤマハのMT-07は、上体を起こした快適なポジションに、低中速から扱いやすい73馬力のエンジン、そしてどっしりとした直進安定性を生む180サイズのリヤタイヤを組み合わせています。つまり、街乗りからロングツーリングまでを気負わずに流せる「ゆとりと安定感」を重視した思想です。
それに対してHONDAのCB750 HORNETは、より戦闘的な前傾ポジションにレスポンスを誇る91馬力のハイパワーエンジンを搭載。そこに、あえてパタパタと軽快に寝ていく160サイズのスリムなリヤタイヤを履いています。ポジション一つをとっても、HONDAの走りに対する一貫したこだわりがフラットに伝わってきますね。
海外メディアも大絶賛 | ミドルネイキッド3台比較でHORNETが勝者に選ばれた理由
バイクの本場である海外の大手メディア『Motorcycle.com』が、現代のミドルクラスを代表する3台(CB750 HORNET vs GSX-8S vs MT-07)をガチ比較する検証動画を公開しました。
彼らが導き出した結論は、驚くほどシンプル。「走りの楽しさ、スペック、性能、そして圧倒的なコストパフォーマンスのすべてにおいて、HORNET 750が頭一つ抜けている」という大絶賛の内容です。
実は、彼らが語るHORNETの美点は、私が実際に試乗して感じた「このバイクのここが最高だ」というリアルなインプレッションとシンクロしていました。
特に、クラス最高峰のパワーを誇るエンジンの吹け上がりの滑らかさと、リアに160サイズを履かせたことによる「ワインディングでのひらひらとしたシャープなハンドリング」は、ライバルを完全に圧倒していると評されています。
また、電子制御が最も充実しているにもかかわらず、価格がこの3台の中で最安値に設定されている点についても「ホンダの価格設定はバグっている」とテスターたちを驚かせています。
唯一の注意点として「大柄なライダーには少しコンパクトすぎるポジション」と指摘されていますが、これは裏を返せば、私のように小柄な体格のライダーにとっては「足つきが良く、大排気量を最高に気楽に扱えるベストパッケージ」であることの証明に他なりません。
総評|数々の大型マシンを借りてきた私がやっと巡り合えた「理想の一台」
これまで私は、自分のバイクライフにおいて本当に価値のある相棒を探すため、様々な大型バイクをレンタルして実走検証を重ねてきました。
素直で扱いやすいSV650、トルクフルで街乗りが快適なMT-07、そしてスポーツの割り切りがレーシーなYZF-R7。それぞれに独自の魅力やメリットがあり、乗るたびにフラットな評価をしてきましたが、どこか自分のライフスタイルや求める走りの理想に対して、あと一歩カチッと噛み合わないもどかしさを感じていたのも事実です。
しかし、今回このCB750 HORNETに出会い、四方から溢れる塊感、電装系の先進的なインターフェース、そしてSOHCの概念を覆す超レスポンスの心臓部に触れた瞬間、初めて心から直感しました。

「あ、これいい・・・」
これほどまでに自分の感性と、求める走りの楽しさがピタッと同期したバイクは初めてです。現在の愛車であるCBR250RRからのステップアップを検討する上で、間違いなく候補ナンバーワンの座に躍り出ました。
終わらないバイクへの情熱|2年後に訪れるであろう「予感」
実は、現在乗っているCBR250RRのローンは、あと2年ほどで完済を迎えるスケジュールになっています。
これまでは「ローンが終われば、ようやく毎月のコスト負担から解放されて一息つけるな」と考えていました。しかし、このHORNET 750という強烈なバイクを知ってしまった今、私の脳内では完全に下記のイラストのような未来の会話が再生されています。

現在の相棒であるCBR250RRがもたらしてくれる走りには日々満足していますが、この2年間のカウントダウンが進むにつれて、次なる電脳ストリートファイターを迎え入れるための新たなローン契約書にサインをしてしまう未来が、今から予感させられます。
圧倒的なコーナリング性能と日常の扱いやすさを両立したこのパッケージングは、それほどまでに魅力的です。大型バイクへの乗り換えで「本質的な走りの楽しさ」を求めているライダーにとって、CB750 HORNETは間違いなく最高の選択肢になると確信しています。



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