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WF-1000XM6長期レビュー|あえて今WF-1000XM5を買い戻した理由

WF-1000XM6とWF-1000X5を比較した写真 オーディオ

ソニーのフラッグシップワイヤレスイヤホン「WF-1000XM6」を発売日に購入し、これまで574時間じっくりと使い込んできました。

前作であるWF-1000XM5にいたっては、通算2,626時間という、我ながら目眩がするほどの時間を共に過ごしてきたヘビーユーザーです。

ソニーの専用アプリに表示された合計使用時間のスクリーンショット。WF-1000XM5が2626時間、WF-1000XM6が574時間と表示されている画面。

これだけの時間を新型のXM6と過ごしてきて、ふと頭をよぎる強い違和感がありました。

「XM5のあの無駄のない小ささは最高だったのではないか」 「ケースももっと小ぶりで、ポケットへの収まりが良かったはずだ」

毎日持ち歩く道具として、気がつけば「実はXM5こそが自分にとって最強のバランスだったのでは?」という思考が止まらなくなってしまったのです。

蓋を開けた状態のWF-1000XM6の充電ケース(左)とWF-1000XM5の充電ケース(右)を並べてサイズ感を比較した写真。

私は常に自分のライフスタイルにとっての最高を求めたいと考えています。そのため、「最新モデルだから」という理由だけで盲目的に使い続けることはありません。さらに言えば、発売からそれほど経っていないにもかかわらず、メーカー側が実質5,000円の値下げに踏み切ったという事実も、初回ロットを信頼して購入した身としては、どこか割り切れないモヤモヤとして残っていました。

それなら、自分の直感と感覚を信じて、もう一度確かめてみよう。

そう決意し、私は再びWF-1000XM5を手元に買い戻しました。

最新のXM6が王座から引き摺り下ろされるのか、それともやはりXM6が最高たる理由を再確認することになるのか。2つの名機をガチで使い込んできたからこそ見えてきた、スペック表には絶対に載らない「人間のリアルな感覚」をベースに検証します。

外観と音質の再確認|やはりXM5の完成度は高すぎた

手元に届いたXM5を箱から取り出し、改めてXM6とじっくり見比べてみます。そこで最初に突きつけられたのは、「デザインオブジェクトとしてのXM5の美しさ」でした。

WF-1000XM6とWF-1000XM5のイヤホン本体比較。

全体がしっとりとしたマット素材で覆われ、少し大柄になったXM6に対し、XM5は艶やかな光沢グロスとマットな質感が絶妙なバランスで使い分けられています。このメリハリが生み出す高級感と、一回り引き締まったコンパクトな佇まいは、やはり今見ても惚れ惚れする完成度です。

指先でつまんだWF-1000XM6とWF-1000XM5のイヤホン本体。艶やかな光沢グロス仕上げとマット素材の質感が確認できる写真。

「モノとしての所有欲を満たしてくれるのは、間違いなくXM5だ」

外観を比較した時点で、私の心は早くもXM5へと大きく傾き始めました。

以前のレビューでも触れた通り、絶対的な音質のピークパワーだけで言えば、XM6の方が一枚上手であるという評価は私の中で変わっていません。

デザイン、音質、ノイズキャンセリング、機能性、装着感、マイク性能を評価したWF-1000XM5とWF-1000XM6のレーダーチャート比較図。

とはいえ、数か月間XM6の音に耳を慣らした状態で改めて聴き比べても、その音質の差はごくわずかなものです。XM5も十分に素晴らしい音を鳴らしてくれます。「この程度の音質差であれば、コンパクトで質感の勝るXM5の方がトータルの満足度は圧倒的に高いのではないか?」

デザイン、サイズ感、そして肉薄する音質。

この時点で、私は自分の選択が正しかったことを確信していました。「やっぱり、日常使いの最適解はXM5がいいのではないか。もうXM6を手放してもよいのかもしれない」と、本気で戻すことをよぎらせていたのです。

──しかし。

その確信は、両者を交互に耳へと装着し、そのまま数時間を過ごした瞬間に、跡形もなく崩れ去ることになります。

耳が察知した違和感|失って初めて気づいた「酸素」の存在

再び手に入れたXM5を耳に差し込み、お気に入りのプレイリストを再生しながら過ごしていたときです。

最初は「やっぱりこのコンパクトさは正義だ。音質もやはりSONY。旧型でも申し分ない」と満足していたはずなのに、時間が経つにつれて、どうにも無視できない「おや……?」という違和感が耳の奥から這い上がってきました。

(なんだか窮屈だ。耳の中が不快で、どうしても馴染めない。)

例えるなら、まるで10分間も狭いエレベーターの密室に閉じ込められたかのような、息が詰まるような閉塞感がじわじわと耳腔内を支配していくのです。

耐えかねてイヤホンをXM6へと付け替えた瞬間、信じられない衝撃が走りました。

ブワッと耳の奥に外気が流れ込んできたかのような、開放感。10分間閉じ込められていたエレベーターのドアが開き、外へ飛び出して思いっきり新鮮な空気を吸い込めたときのような、あの最高の感覚が駆け巡ったのです。

大げさに聞こえるかもしれませんが、まさに「耳の中が酸素を吸って喜んでいる」としか表現できないリアルな感覚でした。

ジブリ風のタッチで描かれた2分割のイラスト。左側は狭いエレベーター内で膝を抱えて閉塞感に苦しむロングヘアの少女、右側は開いたエレベーターから出て開放感に満ちた表情で空気を吸う少女の対比図。

「ああ、もうこれはXM6で決まりだ」

その瞬間に、私の迷いは完全に消え去りました。まさか、サイズ感やソニーの売り方へのモヤモヤから始まったこの検証が、こんなポイントでXM6への大逆転返り咲きという結末を迎えるとは、自分自身まったく予想していませんでした。

この耳腔内の閉塞感への回答が、ソニーがXM6で採用した「新しい通気構造」です。

ソニーのWF-1000XM6本体の側面にあるメッシュ状の小さな穴が集まった「新しい通気構造」を赤丸で拡大した解説画像。

SONY公式サイト

公式サイトの解説によると、この新しい通気構造によって本体から耳への通気量が増え、自らの足音や咀嚼音などの体内ノイズが大幅に減少したとされています。過去のXM6のレビューでもここを私は新機能と紹介してますが、これがまさか大逆転となる一因になるとは想像もしませんでした。

まとめ|WF-1000XM6で正解だった

今回の検証を通じて、私はガジェットにおける「真の進化」とは何かを身をもって知ることになりました。

XM6を何気なく使っているときは、新しい通気構造がもたらす快適さがあまりにも自然すぎて、その真価にまったく気づけていませんでした。しかし、574時間もの間、無意識のうちにその「圧迫感のない快適な状態」に耳が慣れきってしまっていたからこそ、一度過去の完全密閉環境(XM5)に戻した瞬間、脳と耳が猛烈な拒絶反応を起こしたわけです。

木目調のデスクの上に置かれたソニーのワイヤレスイヤホンWF-1000XM6の本体と充電ケース

これは、スペック表の数字を眺めているだけでは100%分かりません。実際に自腹で両方を使い分け、さらにXM6をある程度長期にわたって使い込んだ人間が旧型に戻して初めて、強烈なリアリティを伴って理解できる「目に見えない本物の進化」でした。

「本体が大きくなった割には、ソフト面の進化が少ない」 「ソニーの強気な価格設定や早期の値下げには納得がいかない」

そんな不満やモヤモヤから始まった今回の買い戻し劇でしたが、結果としてあの形状や通気構造は、耳の穴に「酸素」を行き渡らせ、ユーザーを日々の閉塞感から解放するために計算し尽くされた、必然のカタチだったのです。

一度上の快適さを知ってしまった私の耳は、もう過去の密閉空間へは戻れません。

今回の検証で、私のWF-1000XM5への完全回帰ルートは、最高の形で打ち砕かれました。しかし、これほど晴れやかで納得のいく敗北はありません。

WF-1000XM6は、スペックの数字ではなく「日々の心地よさ」において、間違いなく正当な進化を遂げた最高峰の相棒です。もし私と同じように、新型のサイズ感に迷いや疑問を抱いている方がいるなら、自信を持って伝えたいと思います。

「その耳が覚えている快適さこそが、新型を選び続ける何よりの証明です」

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