2,626時間のXM5生活を経て、ついにWF-1000XM6へ
私はワイヤレスイヤホンを使わない日はないほどのヘビーユーザーです。前作の「SONY WF-1000XM5」ですが、アプリのログを確認したところ、発売日からの通算使用時間はなんと約2,626時間に達していました。データのバックアップを初期では取ってないなかったので、もっと多いかもしれません。この2,626時間という膨大な時間の中で、XM5の音の癖や特性は私の脳内に完全に記憶されました。

1日平均約3時間。仕事中のWeb会議からプライベートの音楽鑑賞まで、私の生活のあらゆるシーンに寄り添い続けてきた数字です。
私の本業はソフトの検査品質エンジニアです。製品が基準を満たしているか、期待通りの動きをするか、普段はやらないいじわる検査など多角的に検証するのが仕事です。この検査観点を今回はSONY WF-1000XM6に割り当てて検証します。長くなる為、コーヒーでも飲みながら見ていただければ幸いです。
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ついに手元に届いたWF-1000XM6

左:XM6 右:XM5 さらにサイズが小さくなりました。

付属品はXM5と同じ内容

ケースから取り出した直後の美しい佇まい。質感の高さが際立ちます。


XM6になってケースは角ばったデザインに代わりました。

形状の変化が装着感の向上にどう繋がっているかが見て取れます。

サイズは横幅がXM5比率で、-11%スリム化されています。
世界的エンジニアが定義する「音の真実」
前回のXM5レビューにて、私はその音を「長時間聴いてても疲れない音」とまとめました。極端な強調のないフラットな特性で、聴き疲れしないのが魅力でした。
今回のXM6は、著名なマスタリングエンジニア4名との協力により、アーティストが意図した「作品の完成形」を忠実に再現する調整が施されています。
- ランディ・メリル(Randy Merrill)
- クリス・ゲーリンジャー(Chris Gehringer)
- マイケル・ロマノフスキ(Michael Romanowski)
- マイク・ピアセンティーニ(Mike Piacentini)

左:XM6のイコライザプリセット 右:XM5のイコライザプリセット
XM6のイコライザー設定をXM5と比較した際、最も象徴的な変化はその「簡素化」にあります。XM5では8バンドのプリセットが、XM6では5プリセットへと大胆にデフラグ(最適化)されているのです。
この「不自由という名の進化」の背景には、世界の音楽シーンを形作る4人の伝説的なマスタリング・エンジニアたちの存在があります。
彼らが心血を注いでチューニングした「ブランドとしての完成された音」こそが正解であり、もはやユーザーによる過度な介入(ノイズ)は不要である――。XM6のUIには、Sonyと世界的名匠たちが抱く、圧倒的なプライドがマウントされています。設定項目をあえて減らすことで、プロフェッショナルが意図した「真実の音」へ最短距離でアクセスさせる。この潔い設計思想こそが、ハイエンド機としての真の「静謐な質感」を体現していると言えるのではないでしょうか。
ソニーが今回、4人のマスタリングエンジニアと協業した目的は、単なる「良い音」ではなく、スタジオの「真実」をそのまま耳に届けることでした。
四賢者が語る「WF-1000XM6」という最適解
「何度聴いても飽きない、疲れない。それはプロが認めた音の証。」 ランディ・メリル(Randy Merrill)/Sterling Sound 「アーティストが認めた音を、そのままの形でリスナーに届けることが重要だ。そのためには小さい音量でも細かなニュアンスが聴き取れ、大きな音量でも聴き疲れしないサウンドであることが不可欠。WF-1000XM6は本当に聴きやすく、同じ曲を何度聴いても飽きたり疲れたりしない。」
「音楽の“感情”を、スタジオの外へ連れ出す。」 クリス・ゲーリンジャー(Chris Gehringer)/Sterling Sound 「4人のマスタリングエンジニアと協業したことは、スタジオ本来の音をイヤホンへと忠実に落とし込む、画期的なアプローチだ。WF-1000XM6は音楽の”感情”を再現し、スタジオ体験に驚くほど近いサウンドを届けている。」
「デバイスが消え、音楽そのものが主役になる。」 マイケル・ロマノフスキ(Michael Romanowski)/coast mastering 「理想的な音とは、不自然さのない音。最も満たされるリスニング体験とは、デバイスの存在が消え、ただ音楽そのものに没入できる瞬間だ。WF-1000XM6は、技術ではなく“作品”そのものを主役にする。」
「1dBの微細な調整が、感情の高まりをビルドする。」 マイク・ピアセンティーニ(Mike Piacentini)/Battery Studios 「大きな違いを生むのは1dBの調整だ。WF-1000XM6は、コンパクトなサイズでありながら、スタジオで聴く音に限りなく近いものを届けてくれる。」
上記ランディ・メリルの小音量でも細かなニュアンスを逃さず、疲れない。同じ曲を何度聴いても飽きないというセリフはまさに私のスタイルに完全に一致します。私は80年代洋楽を何度もリピートします。その長時間のリスニングゆえ2,626時間に到達する要因になっています。リスニング中は常に音量は控えめですが解像度も高く聴き疲れしないのが、SONYイヤホンの特徴なのです。
彼らが定義した「ブランドとしての完成された音」があるからこそ、もはや過度なイコライジングという「ノイズ」は不要なのです。設定項目をあえて削ぎ落とし、プロが意図した「真実の音」へ最短距離でアクセスさせる。この設計思想こそが、ハイエンド機としての真の「静謐な質感」を体現しています。
音質比較の検証方法(イコライザ境界値テスト)

とはいえ、テストとなると話は別です。通常の聴き方では完成度の高いイヤホンを聴き比べて違いがわかるものではありません。検証に使用したイコライザー設定。(画面はXM5のイコライザ)左から「低音ブースト」「フラット」「高音ブースト」。通常想定されないいじわる検査(極端な設定)で、イヤホンの素性を暴きます。
ここで、私が導入で触れた「多角的な検証」の核心部分について説明を追加します。このイヤホン本体(特に新開発のドライバー)の造形を確認する一方で、私はその内部システムに対して、ソフトの検査品質エンジニアとして「いじわる検査」を実施しました。本来であれば、このように片方に寄りすぎたイコライザー(図の左右)を、ユーザーが常時使うことは想定されていません。しかし、システムの限界を知るためには、意図的に「境界値」を突く必要があります。
あえてパラメータをずらし、ハードウェアに限界ギリギリの負荷をかけることで、標準状態では見えない音の解像度やプロセッサーの処理能力の「地力」を炙り出す。この多角的な検査こそが、私が本業で培ったノウハウです。この後の楽曲別レポートは、感覚的な「感想」ではなく、この厳しい検査によって抽出された「ログ」に基づく、別格の信憑性を持つ情報です。
厳選!イヤホン性能をテストする9Track
中学生の頃から43歳の現在まで、30年間飽きることなく聴き続けてきた80年代洋楽をリファレンス(基準音)に、曲の隅々まで熟知した私の耳で、わずかな音の違和感も逃さない「限界検証」を実施します。
※体験のしやすさからYouTube Musicを掲載していますが、ソニー本来の音質をフルに体験したい方には、Amazon Music , Apple Music , mora qualitas , Qobuz , TIDAL , 等のハイレゾ音源が聴ける環境をおすすめします。
【全てフラット:設計思想の確認】
【Identity / New Wave部門】Big Apple / Kajagoogoo
映画『ネバーエンディング・ストーリー』の主題歌で知られるリマールが在籍していたことでも有名な、1980年代ニュー・ウェイヴを代表するバンドです。実は、当ブログ「カジャガジェット(Kaja-Gadget)」という名前の由来(Kajagoogoo + Gadget)は、この愛してやまないバンド名からマウントしたものです。中学生の頃から出会い、まさに私のアイデンティティそのものであり、サイトの「顔」として欠かせない存在を選びました。1983年に発表されたこの「Big Apple」は、ニック・ベッグスによる極めてタイトなスラップベースと、煌びやかなホーンセクション、そして複雑に重なるシンセサイザーのレイヤーが特徴です。XM6の新設計ドライバーが、あの重厚かつ鋭いベースの立ち上がりをどこまで忠実にサンプリングできるか、そして音の洪水の中でボーカルが団子にならずに「分離」して響くかを検証するのに最適です。豆知識:この曲のタイトルである「Big Apple」は、ニューヨーク市の世界的に有名な愛称を指しています。きらびやかで刺激的な反面、孤独や冷たさも併せ持つ「大都会ニューヨークそのもの」を象徴しており、そこで生きる人々の喧騒や都会の力強いエネルギーを表現しています。
【ロック部門】Hungry Like the Wolf / Duran Duran
1980年代の第2次ブリティッシュ・インベイジョンを象徴する、ニュー・ウェイヴ・ロックの金字塔です。実は、先ほど紹介したKajagoogooにとっては、音楽的にもシーンの立役者としても、まさに「兄貴分」と呼ぶべき存在。 当サイトのDNAを語る上でも、外せないリファレンスです。エッジの効いたギターと、当時としては非常に鮮明でクリアなシンセサイザーの音階が融合した、躍動感あふれるサウンドが特徴です。非常にタイトなリズムセクションと、重層的なシンセサイザーのレイヤーを確認するのに最適です。XM6が、この疾走感あるビートを濁らせずに「音の分離感」を維持できるか、また高域のシンセ音が耳に刺さらずクリアに響くかを検証するために選出しました。
【POPS部門】It’s All I Can Do / The Cars
映画「ウェディング・シンガー」楽曲に選ばれた、80年代ニュー・ウェイヴ・ポップの傑作です。クリーンなギター、乾いたドラム、そしてグレッグ・ホークスの印象的なキーボードが、緻密に計算された音響空間の中に配置されています。オーディオマニアが再生機器のテストに使うほど、録音のクオリティが高い楽曲です。左右に振り分けられたギターの質感の違いや、ボーカルの定位、録音スタジオの「空気感」までもがXM6でどこまで再現されるかを検証するために選出しました。
【New Wave部門】Karma Chameleon / Culture Club
1983年の世界的大ヒット曲です。モータウンの影響を受けたリズムに、ハーモニカの軽快な音色が混ざり合う、非常に「色彩豊か」なポップスです。ボーイ・ジョージの伸びやかなヴォーカルと、間奏のハーモニカの質感をどこまでクリアに捉えられるかが鍵です。中高域がフラットで味付けの少ないXM6で聴くことで、「楽器の描き分け(分離感)」を冷徹に確認するのに適しています。
【低音強調:極限状態での音の分離】
【ダンスホール部門】I Feel for You / Chaka Khan
1984年にリリースされた楽曲。プリンスが作詞作曲し、スティーヴィー・ワンダーのハーモニカやラップの導入など、当時の最先端技術が詰め込まれたリッチなファンク・ダンスナンバーです。非常に強力なシンセ・ベースのグルーヴと、多種多様な効果音が混ざり合う複雑な構成、今聴いても古さを感じさせません。XM6の低域の沈み込みとレスポンス、そして情報量の多いミックスの中でも音が団子にならず、一つ一つの「音の粒」を正確にサンプリングできるかを確認するのに適しています。※豆知識:「Chaka Khan, Chaka, Chaka, Chaka Khan…」と名前を連呼するフレーズは非常に有名ですが、これはレコーディング時のミス(サンプリングマシンのエラー)によって生まれた偶然の産物と言われています。
【Italo Disco(イタロ・ディスコ)部門】Asia (DJ Joey Alba’s Dub) / MO
オリジナルは1985年リリースのイタリア産ディスコの代表格です。Dubバージョンはヴォーカルを抑え、リズムとベース、エフェクトを強調しているため、より「音響的」な要素が強まっています。Dub特有の「重く、うねるベースライン」は、低域の領域が広いXM6の得意分野です。リズムが地を這うように響くか、それとも音が濁ってしまうか、XM6の「低域の解像度」を測るベンチマークになります。
【ユーロ・ディスコ部門】Sahara Night / F.R David
『Words』で知られるF.R.デイヴィッドによる、1987年のユーロ・ディスコ作品です。透明感のあるハイトーン・ヴォーカルと、80年代特有のきらびやかなシンセ・サウンドが夜の砂漠のような哀愁を漂わせます。中高域の透明感と、シンセサイザーの質感を検証するのに適しています。特にXM6がハイトーン・ヴォーカルの細かなニュアンスを拾い上げつつ、電子音の響きにどこまで「奥行き」を持たせられるかを検証するポイントとなります。
【高音強調:高域の限界値と伸び】
【高音・ピアノ部門】愛の予感 / david foster
ピアノの美しい旋律が主導する珠玉のバラードです。1985年の映画『セント・エルモス・ファイアー』のインストゥルメンタル・テーマ(邦題:愛の予感)です。80年代を象徴するヤマハ「DX7」などのシンセサイザーときらびやかなグランドピアノが幾重にもレイヤー(層)されており、透明感と気品に溢れたバラードです。デヴィッド・フォスター特有の「一音一音が結晶のように輝く」緻密なプロデュースが堪能できます。
【バラード部門】True / Spandau Ballet
こちらも映画「ウェディング・シンガー」楽曲に選ばれた、サックスの音色とソウルフルな歌声、そして深いリバーブ(残響)が特徴の、世界的な名バラードです。80年代のロマンティックな空気感を凝縮したような「濃密なサウンドステージ」を持っています。ヴォーカルの温かみと、音場の広さをテストするために重要です。XM6が、深くかけられたリバーブの広がりをどこまで立体的に再現し、聴き手を包み込むような没入感(サウンドステージ)をビルドできるかを最終確認するために選出しました。
【音質比較】数値で暴くWF-1000XM6の「正当進化」
今回の検証で最も大きな収穫は、イコライザーで高音域(TREBLE)を強調した際の挙動の違いでした。ここには、ハードウェアの進化が如実に現れています。
【比較表】WF-1000XM5 vs WF-1000XM6 サウンド特性
| 評価項目 | WF-1000XM5(従来モデル) | WF-1000XM6(最新モデル) |
| 音の全体像 | 「透明感と安らぎ」フラットで、中高音の繊細さが際立つ。 | 「熱量とエネルギー」厚みのある低域が音楽の土台を支える。 |
| 高音域(TREBLE) | 繊細だが限界がある。強調しすぎると音が細くなりやすい。 | 高い安定感。強調しても音が破綻せず、滑らかに伸びる。 |
| 採用ドライバー | ダイナミックドライバーX バランスは良いが、XM6ほどの高域制御技術は未搭載。 | WF-1000XM6専用設計 高剛性ドームと柔らかいエッジを組み合わせた最新構造。 |

WF-1000XM6:新設計ドライバーがもたらす「圧倒的な安定感と熱量」
XM6の最大の特徴は、新開発の専用ドライバーユニットによる音の「芯の強さ」です。
- 破綻しない高音域: イコライザーで高域を振っても音がスカスカにならず、不自然さを感じさせません。これは、高剛性ドームと柔らかいエッジを組み合わせた新しい振動板構造、そして高域共振を抑える「ノッチ形状」の採用が、この小さなハウジング内で功を奏していると言えます。
- 豊かさを増した低域: 通気孔(アコースティック・ダクト)をユニットと一体化させた新設計により、本体のさらなる小型化と同時に、より深く豊かな低音域の再現を可能にしています。
WF-1000XM5:中高音の透明感と「繊細なバランス」
対するXM5は、フラットな状態では非常にバランスの良い優等生ですが、極端な設定では限界も見えてきます。
- 高域の限界値: イコライザーで高音を強調しすぎると、音が細くなり、どこか物足りない(スカスカとした)印象になる傾向があります。これは、XM6ほどの最新鋭の高域制御技術が、先代のドライバー構造では未搭載であったための差と言えるかもしれません。
- 聴き疲れの少なさ: 耳の奥に密着するイヤホンだからこそ、この耳に優しい出力バランスは大きな利点です。仕事中やレタッチ作業中など、長時間の使用でもストレスを感じにくい「安らぎの設計」です。
イコライザーを「フラット」に設定。特に解像度の高さで驚愕したのは、この楽曲の検証結果です。
Benchmark Track: Duran Duran — Hungry Like the Wolf
パワフルなキックとベースラインが支配するこのトラックにおいて、通常は中低域に埋もれがちな背後の「ポロポポポロロロ……」というシンセサイザーの粒立ち。 XM6はどのセッションでも常に小さい音量でもこの「音の粒子」を他の帯域から完全に分離し、独立したパケットとして正確に耳に届けています。XM6でないイヤホンでも聴きとれますが、分離感が段違いです。
重厚なアンサンブルの中でも解像度が押し潰されることはありません。ランディ・メリル氏が提唱する「アーティストが認めた音を、そのままの形でリスナーに届けることが重要」という哲学を具現化したような、明瞭な定位を維持し続けます。
これは単なる「音の良さ」の次元ではありません。複雑なレイヤーで構成された楽曲の、「制作者の隠れた意図」を可聴化(可視化)する、圧倒的な解像度の証明と言えるでしょう。
前作WF-1000XM5と最新のWF-1000XM6を、6つの客観的指標でスコアリングしました。

1. 音質:妥協なき頂点への到達(4.0 → 5.0)
検証の結果、音質面での向上は圧倒的です。世界的エンジニアの哲学を反映した解像度は、80年代洋楽の複雑な音像を完璧に描き出し、文句なしの満点評価となりました。XM6と比較してXM5を低くした理由は限界テストで高音域に限界があり細くなりやすいことを反映した結果となります。
2. ノイズキャンセリング(N.C):+25%の静寂を実感(4.7 → 5.0)
ソニーが公称する「+25%の強化」は、単なるカタログスペックではありません。実際に使用した際、騒音を打ち消す「圧力」と「精度」が明らかに進化しており、究極の没入感を提供してくれます。
3. 機能性:より高度なユーザー体験へ(4.5 → 5.0)
XM6では、日常に寄り添う「BGMモード」や、製品の寿命を延ばす「バッテリー最適化機能」が新たに追加されました。これらは、一つの道具を長く、大切に使い続けたいユーザーにとって大きな付加価値となります。
4. 装着感:唯一、前作が上回るポイント(5.0 → 4.8)
今回の比較で唯一スコアが下がったのが装着感です。XM6も非常に優秀ですが、より小型で耳への収まりが良かったXM5のフィット感を私は好みます。小型化と高性能化のトレードオフを感じる部分です。
5. デザインとバッテリー:高水準での維持
デザイン:利便性の裏側で失われた「高級感」(5.0 → 4.8) 数値がわずかに低下した理由は、筐体の質感にあります。実用性は維持されているものの、前作が持っていた「手にした瞬間の重厚な高級感」が薄れ、ややカジュアルな印象にシフトしました。道具としての完成度は高いものの、フラッグシップ機としての情緒的な満足度は一歩譲る結果です。
バッテリー:新機能追加に屈しないスタミナ(5.0維持) 一方で、バッテリー性能は見事に満点を維持しています。理由はXM5は現在でも何の不満もなく劣化もなく2年半稼働し続けています。XM6はバッテリー最適化といった新機能を搭載しましたが、まだこれからの評価になる為、互角としました。
総評:総合スコア「29.6」が語る結論
満点が30点にたいして前作の 28.2 に対し、今作は 29.6 という両者僅差という極めて高い数値を叩き出しました。 装着感という個人の好みによる微減を除けば、音質と静寂、そして機能性のすべてにおいて「正当進化」を遂げていることが数値からも証明されました。ただし共に完成度が高いことに変わりはありません。
まとめ:デバイスの進化が「音の自由度」を変えた
検証を通じて、XM6は単なる音質の変化にとどまらず、「音をいじっても破綻しない」という再生能力の底上げがなされていると感じました。音楽の熱量をそのまま受け取りたい、あるいは自分好みの音を追求したい方にとって、このドライバーの刷新は非常に価値のあるアップデートです。
ノイズキャンセリングと装着感のブラッシュアップ
私はノイズキャンセリングの性能比較を行う際、必ず実施する検証「A/Bテスト」があります。それは、「片耳に基準となるXM5、もう片耳に新しいXM6」を装着し、あえて騒音の激しい場所へ向かうことです。さらに脳がINPUTを補正してしまうことがないよう、一定時間後XM5⇔XM6左右入れ替えます。
両耳をXM5からXM6へ付け替える一般的な方法では、脳が音を補完してしまい、僅かな静寂の質の差を捉えきれないことがあります。しかし、この「左右比較装着」であれば、ノイズを打ち消す力の強さや、残る環境音の違いをリアルタイムに、かつ忠実にサンプリングできます。僅差の性能差も逃さない、エンジニアとしてのこだわりです。
前作XM5は「生活圏で最強の静寂」と評価しましたが、XM6ではマイクの数が片耳4個に増設され、騒音を抑える力が約25%向上しています。本日はファーストインプレッションのため、本来実施すべき多角的なフィールドテストには至っていませんが、まずは家庭内における「高負荷な騒音環境」であるドラム式洗濯機の至近距離と、テレビの声や家族の話声という2つのポイントで緊急の比較検証を行いました。
その結果、全体的な静寂がさらに一段階深まり、スペック通りの「+25%」という進化を肌で感じることができました。 特筆すべきは、遮断性能です。これまではノイキャン越しでもわずかに漏れ聞こえていたテレビの音声が、XM6を装着した瞬間に、まるで厚手の防音窓をピタリと閉め切ったかのような静寂へと塗り替えられます。
数値上の約25%という性能向上は、単なるカタログデータではなく、こうした現実の環境下でこそ、XM5との明確な「静寂の深度の差」として現れています。これは高音質ノイズキャンセリングプロセッサーQN3eが新たに採用されたことによる性能向上と言えます。
「寿命の最適化」いたわり充電とオートパワーセーブ


数万円を投じて手に入れるハイエンド・イヤホンは、単なる消耗品ではなく、数年単位で人生に寄り添う「パートナー」です。XM6で新たに追加された「いたわり充電」と「オートパワーセーブ」は、そんなユーザーの想いに応える最高のシステムパッチと言えます。
「いたわり充電」は、満充電によるバッテリーへの負荷を物理的に回避し、長期間にわたって安定した駆動時間を維持するための防壁となります。また、残量20%以下で自動発動する「オートパワーセーブ」は、DSEE Extremeやイコライザーを賢く制御することで、静寂を楽しむ時間を1分でも長く引き延ばしてくれます。
「お気に入りのものを、できるだけ長く、最高の状態で使い続けたい」。そんな大人の審美眼を持つユーザーにとって、この機能の実装は「機能性」以上に「プロダクトへの誠実さ」を感じさせるアップデート(正常系への進化)ではないでしょうか。
【気になる点】外観の高級感が薄れた印象も
今回の比較で、音質以外の面で気になったのが「外観の高級感」です。

左:XM6フラットなブラック 右:XM5コントラストが光るデザイン
XM5は、全体的なマットな質感の中に、サイドの光沢ラインがアクセントとなり、メリハリのあるデザインで高級感を演出していました。また、「SONY」のロゴや側面にある小さなマイク部が金色(ゴールド系)で、華やかな印象でした。

一方、XM6は全体的にマットな質感に統一されており、XM5に比べてより落ち着いた、実用重視の印象を受けます。XM5では金色であった「SONY」のロゴが、XM6ではベージュ寄りの色合いになり、側面にあるマイク部が黒一色になったことで、凄くもったいない印象です。
まとめ:所有する喜びか、実用性か
このデザイン変更は、所有する喜びよりも、音に集中するための実用性を重視した結果かもしれませんが、XM5の華やかなデザインを好んでいた人にとっては、少し物足りなさを感じるかもしれません。外観の好みは人それぞれですが、この「高級感の減少」が気になる人もいるという点は、考慮すべき点でしょう。
総評|XM5ユーザーは今すぐ買い換えるべきか

カジャガジェとしての最終判定を下します。
結論から言えば、XM5ユーザーは次のステージへ行きたいと思うのであれば迷わず「今すぐ買い換えるべき」です。比較結果が僅差なのになぜ?という理由 → ワイヤレスイヤホンはもはや生活の一部です。体に常についてくるガジェットはスマホ以外にあまりありません。費用効果で考えると、時間単価は凄くコスパがいいのです。
またXM6は単なる小規模な改良ではありません。音の出口であるドライバーの改良、マイク数の増加、そして音作りのプロとの協力という、ハード・ソフト両面での大規模な進化が遂げられています。

1日3時間、生活の一部として2,626時間を共にした私ですが、明日からはこのXM6を新たな「基準」として生活に取り入れます。品質管理を仕事とする者の視点から見ても、隙のない、極めて完成度の高い一品だと断言します。
2,626時間を共にしたXM5への感謝を込めて、私は今日、その役目をXM6へと引き継ぐことにしました。
次なるフェーズへ|イコライザーの最適解と新BGMモードとは?を解説
「音の分離」や「制動力」といったスペックの限界検証は、あくまで序章に過ぎません。第2弾では、今回の記事で物足りなかった読者へ送る第2弾、80s代洋楽のさらなる厳選10曲を世界的巨匠4名の哲学を元に、イコライザーの最適解を解明します。さらに新しく搭載されたBGMモードも以下でレビューしました。
デバイスが消え、想い出が最高解像度で再構築される瞬間——。 エンジニアの私が辿り着いた「感情の現像ログ」の続きは、こちらから。
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